たなぼた

風立ちぬ

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ともかく古くて黄ばんでいて傷んでいる本が欲しいのです 


と 頂いたのは堀辰雄の「風立ちぬ・美しい村」 
昭和29年の版だった 







私の前方に横たはつてゐるこの谷の全てのものは 
最初のうちはただ雪明りにうつすらと明るんだまま一塊になつてしか見えずにゐたが 
さうやつてしばらく私が見るともなく見てゐるうちに
それがだんだん目になれて来たのか 
それとも私が知らず識らずに自分の記憶でもつて 
それを補ひだしていたのか 
いつの間にか一つ一つの線や形を徐ろに浮き上がらせてゐた 

それほど私にはその何もかもが親しくなつてゐる 
ここの人々の謂ふところの幸福の谷 
さう なるほど・・・・ 



‥‥あの年もまた、今年のような日照りの年で 
幸福の谷と呼ばれた森の道を分け入っても分け入っても 
堀が描いた情景にはほど遠かったことなどを 思いだした  

なにかこう 体調は今ひとつ どちらかといえばボロボロなのに 
あの時の縁なのか 
小一時間滞在するだけの用事のために 
軽井沢に行くことになった 

その軽井沢もめっぽう暑かった 
その軽井沢で梅雨明けの宣言を聞いた 

もう一つどうでも良い話だが 
実は三冊古本をもらった 

残りの二冊は 森鴎外の「雁」 林芙美子の「泣蟲小僧」
いずれも昭和三十年前後の出版だったが
素晴らしく紙がよい角川、まあまあの新潮 ボロボロの岩波 
と その差は顕著であった 
その劣化はインクの定着を促す硫酸アルミニウムの酸加水分解で 
硫酸ができるためとは驚いた 
何事も勉強である 

暦の上の風が立つにはいささか早いが 
思いっきり風の激しい 昨日今日の松本ではあった 

by 11hiyo | 2018-06-30 20:20 | sora